2日目


2日目の朝、目が覚めると7時だった。
テレビを付けて、NHK BSのニュースを見る。
台風9号は前日、済州島(朝鮮半島の南にある島)で猛威を振るったらしい。
今後の進路予想を見ると、ソウルには影響がなさそうだ。
ただ、窓の外を見ると昨日より風が強い感じがした。

夫をたたき起こし、朝ご飯を食べに出掛けようと誘う。
旅行前に残業続きだった夫は眠そうである。
シャワーを浴びろと急かし、出掛ける準備をする。
今日は、昨日行った仁寺洞で茶器を買い、明洞で服やら化粧品やら食料品を買い込み、夕方から本命の汗蒸幕に行くのだ。

ホテルを出て、お粥の専門店を探して歩く。
中国や台湾と同様、韓国も朝粥は有名らしい。
ホテルから梨泰院の駅まで、お粥求めてぶらっと歩く。
ホテルの近くに、お粥の店はあったにはあったのだが「とりあえず他の場所に行ってみよう」と思い、通り過ぎた。
しかし、ワンサカあると思われたお粥の店は、ホテルの近くの店以外見あたらない。
梨泰院の駅に着いても、メインストリートを歩いても無い。
(実は、飲食店街はメインストリートを一本入ったところにあったということが翌日夕方に判明。)
朝早いので、駅前は店も開いていなく、することがない。
仕方が無いので、場所を移動し、仁寺洞方面でお粥を食べることにした。

地下鉄に乗り、今回は安国の手前、鐘路3街(チョンノサムガ)で下車し、ぶらぶら歩く事にした。
地上に上がる際「ドコの出口から出たらいいのかな?」と構内の案内図を探していると、英語でオバちゃんが話しかけてきた。
「何処まで行くのですか?」と聞かれたので「インサドン。」と答えると、「ここのホームから電車に乗って、安国という駅で降りなさい。」と言われてしまった。
イヤ、わざと一駅手前で降りたんだけど。
「歩いて行きたいんだけど。」と言うと「エー、遠いわよ。」と、オバちゃん。
そんなことないよ。
ソウルの地下鉄って駅間が短いから、一駅二駅は平気で歩ける。
オバちゃんは歩いて行く方法を教えてくれたので、私達は礼を言って別れた。



仁寺洞のメインストリートから少し離れた所を歩いていると、あちこちにお粥の店を発見。
中を覗いてみると、ハングル文字でメニューが書かれている。
どうやら観光客相手のお店はあまり無いらしい。
ハングル文字が読めない、韓国語も殆ど話せない私達にはちょっと無理かも。
そこで、仁寺洞のメインストリートの方に歩いて行く。
しまった。今度は早朝からやっている店がない。
裏道も歩いてみたが、シアトルズベストやマクドナルドが開いているのみだった。
せっかく韓国に来たのにマックというのもなぁ。
時刻は9時半である。
仁寺洞のお店のオープン時刻は10時とか11時とかだろうから、それまで時間を潰す場所がない。
ここまで来たので、安国の1つ先の駅、景福宮の向こう側にある参鶏湯で有名な「土俗村(トソクチョン)」で、参鶏湯をブランチとして食すことにした。土俗村までは、地下鉄で一駅である。
この間も、またもや歩く。
地下鉄代、たった600W(約60円)をケチっているわけでは無い。
店までの途中、景福宮(韓国で有名な遺跡の一つ。豊臣秀吉の朝鮮出兵で壊されたので、現在残っているのは後に復元したもの)があるので、「写真の1枚でもとっておかねばソウルに来た記念にならんではないか!」と思い、立ち寄ることにしたのだ。
景福宮は安国駅と景福宮駅の間にあるので、地下鉄に乗ってしまうとまた徒歩で戻ることになってしまうのだ。


照りつける太陽の下、汗をかきながらひたすら歩く。
ようやく、景福宮の門の前に到着。
更に門の奥300mといった場所に門がある。
宮殿は更にその奥っぽい。
私達は最初の門をくぐって、2番目の門をバックに写真を撮るだけに止めておいた。
中までじっくり観光するのは、ヘトヘトの私達にとって自殺行為である。
景福宮を出て、今度は土俗村を目指す。
持っているガイドブックの地図がアバウトだったので、不安になりながら歩く。
夫は不機嫌そうだ。

そして参鶏湯の店「土俗村」に到着。
お店は既にオープンしていて、何人かお客さんが入っていた。
建物が煉瓦造りで、中庭があったりして、すごくいい雰囲気である。
韓国の人も食べに来ているようで、通された席のある部屋には男性の韓国人グループが談笑しながら参鶏湯をつついていた。

店の人に普通の参鶏湯と烏骨鶏(うこっけい)の参鶏湯をオーダーした。
まず最初にキムチやカクテキが運ばれてきて、参鶏湯が来るまでそれらをつまむ。
ウマイ!特にカクテキ!
しばらくして、グラグラと煮立った参鶏湯が運ばれてきた。
スッカラで身をつつくとホロホロっと崩れていく。
塩とこしょうを入れて、スープを一口。
ウッ・・・ウマイ!!
鶏の出汁が良くでていて、コクがあるのにサッパリしてる。
空腹にこの味はたまらない。
鶏肉もすごく柔らかい。
烏骨鶏の参鶏湯は鶏の身が真っ黒。
そして骨も真っ黒。
普通の鶏肉と比べて、身が締まっている感じがする。
滋養にすごくいいらしいけど、味的には普通の参鶏湯のほうが私は好き。
(滋養に良いということなので、お疲れ気味の夫に食べさせてあげた。)
烏骨鶏の方が値段もちょっと高いし。
だけど、日本では食べられないし、もし食べられたとしてもきっとすごく高いだろうから、韓国に行ったら1回は食べておいた方がいいかも。土俗村を出て、再び仁寺洞に向かう。
今度こそ、地下鉄に乗って戻れば良かったのだが、またもや景福宮と安国の駅の間に用があった。
夕方から私が汗蒸幕に行くのだが、私がいない間、夫の仕事の後輩が現在韓国に出向しているので、夫と後輩とで久々に逢ってご飯でも食べておいてもらおうと考えていた。
しかし、現時点で詳しい待ち合わせ場所等が全く決まっておらず、後輩の自宅の電話番号も判らない。よって「後輩の仕事場に行って連絡を取ってもらえないか聞いてみよう」ということになったのだ。


地図を見ながら、その仕事場まで行った。
警備の人に声を掛けて、中にいる人と連絡をとってもらう。
今日は土曜日なので、ご本人は不在。中には留守番の人しかいなかった。
とりあえず、日本語の判る人に携帯の番号を伝えて「この電話に連絡して下さい。」と伝言をお願いした。
「本当にちゃんと連絡を取ってくれるだろうか。」と少々心配しながら仁寺洞に向かった。
仁寺洞メインストリートに再び到着。
石畳の道と、低層の瓦葺きの街並みがいい雰囲気である。
書画や骨董品、そして茶道具のお店がたくさんある。
手当たり次第、茶器の売っているお店に入る。
中国茶の工夫茶器を売っているお店もあったが、値段は日本で売っているのとだいたい同じだった。

ガイドブックにも載っている「ソウル茶生園」に入る。
女性の店員さんは日本語が話せる人だった。
店内の茶器を物色していると、夫の携帯に電話が入った。
どうやら夫の後輩からだったようである。
後輩の職場の人はちゃんと連絡を取ってくれたのだ。
ありがたい。
あと、携帯電話をレンタルしておいて本当に良かった。
夕方に鷲梁津(ノリャンジン)というところの水産市場に行って新鮮な刺身を食べるらしい。
実は、ソウルに向かう飛行機の中で夫にガイドブックを見せながら、「こんな場所があるから後輩の人に連れてってもらったら?」と話していたので、少々驚いた。

とりあえずソウル茶生園では何も買わず店を出て、ホッとしたところで「伝統茶院」でお茶でも飲もうということになった。
耕仁(キョンイン)美術館と同じ敷地内にある茶院で、庭でもお茶が飲めるようだ。
庭の木々や韓国の伝統的な風景を愛でながら、お茶を飲むというのもなかなか魅力的ではあるが、なにぶんこの酷暑である。
涼しい店内に入り、シッケ(お米を発酵させた飲み物。甘酒のノンアルコール版みたいな。)とスジョングァ(干し柿の入った甘い飲み物。シナモンの味が効いてる。)をオーダーした。
冷たさと甘味が暑さで疲れた体に染み渡る。
個人的にはもうちょっと甘さ控えめの方が好きだけど。
夫は「韓国のお茶ってお茶というよりもジュースだよね。」と言っていた。
一緒に出されたお菓子も懐かしい感じの味がするお菓子だった。
もう少ししのぎやすい天気であれば、庭のオープンカフェで本を読みながら、1時間でも2時間でも過ごしていたい、そんな茶院だった。

伝統茶院を出て、再びソウル茶生園に戻る。
お店の店員さんは「あー、戻って来てくれたんだー。」という顔で微笑んだ。
先程の続きで、店内を物色。
店頭のセール品の5000Wの一人用茶器が手頃だったので、職場用と自宅用に買った。
前日「ありありらん」でもらった茶器よりもデザインが私好みだ。
えーい5000Wでお気に入りが買えるんだったら、買ってしまえ。(そして家の食器棚が窮屈になるという罠。)
他にも急須と湯飲みが重ねて収納できる白磁の一人用茶器(12000W)も購入。

外に出て、他店で売っていた茶器にも幾度となく目移りがした。
うー自宅に「茶器専用箪笥」が欲しい。(しかし、その前に箪笥自体を置く場所が無い)
ひと通り仁寺洞を散策し、明洞に向かった。



目指すはロッテ百貨店である。
ロッテ百貨店の最寄り駅、乙支路入口(ウイチロイック)も歩いて行ける距離である。
セブンイレブンで買ったミネラルウォーターで水分補給しながら、目的地目指して歩く。

「ロッテ百貨店の地下食料品売場は充実している。特にキムチはここで買うべし。」
ガイドブックを見ても、ネットで調べてもそう書かれている。
ロッテ百貨店に着くなり、併設の免税店には目もくれず、地下食目指す。
やはり噂どおりの充実具合である。
日本で「デパートでお買い物」というと、なんとなく高そうなイメージがあるが、韓国の場合スーパーの値段とそれ程変わらなかった。
値段が一緒ならば、信用のおける店で買ったほうが良い。
私たちはお目当てのキムチ売り場へ向かった。
何種類か試食させてもらったが、どこのメーカーのキムチもおいしかった。
値段と味、プラスおまけも付いたメーカーのキムチに決定。
白菜キムチを500g×4つ、カクテキを500g×3つ、おまけのキムチが300g×1つ。全部まとめてラップでぐるぐる巻きにしてもらった。
これで、お土産はオッケー。
ふと夫の顔を見ると非常に不満そうである。
あたりまえだ、4kg近くのキムチを持たされているのだから。
「まだ買い物終わんないの?」「なんでキムチ買うの買い物の最後にしなかったの?」
あううう・・・ゴメンよ、無計画な妻で。
ロッテ百貨店では、ロッテブランドのディスカウントがされている。
特にミネラルウォーターは、たまたまセール中だったらしく500mlのペットボトルが250Wで売っていた。
約25円でミネラルウォーターが買えるとは・・・ロッテ百貨店マンセーである。
(ちなみに他の韓国メーカーのミネラルウォーターは600W〜900Wくらい)
ロッテ百貨店を出て、今度は明洞の駅の方までショッピングすることにした。
が、この暑さである。
ナイキに入って、梨泰院のナイキの方が品揃えが良く、安かったことを確認し、私が化粧品店を物色していると、「もう先にホテルに帰るからね!」暑さとキムチの重さに耐えかねた夫はそう言い放った。
「えぇ〜〜〜」異国の地で妻を一人きりにするのか、この夫は!とか思ったが、このまま買い物に付き合わせるのも申し訳ないので、「ホテルに着いたらちゃんと冷蔵庫の中にキムチを入れてね。」と念を押し、別れた。

夫と別れ、再び化粧品店を物色。
ここで激安リップグロス発見。
なんと600W!(¥じゃないよ。日本円にしたら、たったの60円!)
このグロス、チープな値段とは裏腹に、着きも伸びも良く質は結構良い。
たった600Wのグロスを買っただけなのに、コットンとか化粧品サンプルとか3点くらいもらえて、凄く得した気分。
明洞では他にもミリオレの中にも入ってみたけど、結局何も買わず。
暑さでうだりながら街中をテクテクと歩いているうちに、疲れがピークに達し、とうとう肩こりと頭痛が発生してしまった。
疲労困憊した私はたまりかねて、1時間早いにも関わらず汗蒸幕に行く事にした。
お目当ての「永東(ヨンドン)汗蒸幕は、漢江の南側の江南(カンナム)にある。
明洞から地下鉄に乗り、江南の駅を目指す。


途中、乗り換えの駅で、夫の携帯に電話を入れた。
「直接汗蒸幕に行くから、ホテルには戻らないよ。トランクの中にお醤油とワサビが入ってるから持っていったほうがいいよ。」
夫は夕食に刺身を食べることになると思うのだが、韓国の醤油は甘く、ワサビは芥子大根にペパーミントグリーンの色付けをしたというシロモノなので、日本人にとってはせっかくの新鮮な刺身が物足りなくなくなってしまうらしい。
ということを事前にガイドブックで知ったので、日本から持参したのである。
ところで、私たちは仁川空港でKTFテレコムという韓国の携帯電話をレンタルしたのだが、韓国の携帯電話は電波が強いのか、地下鉄走行中でも通話可能である。
また、日本の携帯に比べて非常にコンパクトだ。
液晶画面はカラーで、端末がコンパクトな分、画面もコンパクト。
軽いしポケットにもすっぽりなのがいい。
操作画面がハングル文字なので、リダイヤルやダイヤルメモリの仕方が分からず、いちいち番号をプッシュしていた。
ソウルの街中を歩いて分かったのだが、私たちがレンタルした携帯、韓国で流行のモデルらしく、携帯を持っている韓国人のほとんどが、「ホワイトの折りたたみ」携帯を持っていた。
私たちがレンタルしたのはLG電子製だったが、SAMSUNG製のものも同じようなモデルだった。


江南の駅に着き、地図を見ながら汗蒸幕を目指したが、地図が大雑把だったので、暑い中をフラフラになって歩いていた。
ふと気づくとモーテル街の中。
「えー、こんな所にあるの?」と思っていたら「永東汗蒸幕」の看板が見えた。
なんとなく、ガイドブックにあった「江南駅より無料送迎サービス」の意味が分かった気がした。
永東汗蒸幕に着くと、受付の店員さんがびっくりしていた。
送迎サービスを利用せず、一人で歩いて来店する日本人は珍しいらしい。
ネットで予約している旨を伝え、「1時間早く来ちゃったけど大丈夫ですか?」と聞くと「大丈夫です。」とのこと。
基本コースを選び、「塩袋」をオプション(ネット予約サービスで無料)に付けた。
料金を支払い、2階のロッカールームに案内された。
私の他に客はほとんどいないようだった。
袖の無い浴衣のようなガウンに着替え(中はもちろんすっぽんぽん)、下に降りた。
すると待ってましたとばかりに、麻袋を渡され、私は麻袋をかぶって汗蒸幕の中に入る。
昨日経験済みなので慣れたものである。
入ってみると、松のスモークされた香りがぷんと漂う。
そして昨日の汗蒸幕よりもすごい熱気。
たちまちに汗が吹き出た。
5分位経った頃に、扉を開けて外に出る。
「大丈夫ですかー?」と店員のお姉さんが声を掛けて水を渡してくれた。
水を飲んで一息つくと、「ここで休んでくださーい。」と床に寝かされた。
店員さんが冷たいおしぼりで、顔や首周りを拭いてくれる。
すごく気持ちがいい。
少し横になってから、再び汗蒸幕にトライ。
前述と同じことを繰り返し、合計3回汗蒸幕に入った。
その後、塩袋をやった。
塩袋とは、汗蒸幕の中で温められた塩の入った袋(2kg位の重さ)を体の上に乗せるものである。
遠赤外線効果で、塩袋の置いた場所からじんわりと体が温められていく。
私は、お腹と両肩に置いてもらった。
炎天下の中、リュックを背負って朝から歩きっぱなしで、肩がすごく凝っていたので気持ちよかった。
肩こりで頭痛になり気分が悪くなっていたのだから、今思えば塩袋を徹底的に、あと指圧マッサージもオプションでつけておくべきだったかもしれない。
30分ほど塩袋を乗せてから、今度は地下のアカスリ場(?)ヘ。
軽くシャワーを浴びて、汗を流し、永東汗蒸幕名物とも言える「高麗人参風呂」に入った。
ここの高麗人参風呂は、毎日蒸した高麗人参を9kg使用しており、しっかりした泡が湯船一面を覆っている。
泡はバブルバスの石鹸の泡と違って、なかなか消えないので、水面から泡の層が30〜50cmある。
高麗人参風呂に入った後、シャワーで泡を洗い流して、今度は冷水風呂に入った。
それを3回ほど繰り返し、程よく皮膚がふやけたところで、いよいよアカスリ台へ。
丁度いい力加減で、ごしごしと擦られると垢がボロボロと出てくる。
ソウルに来る2週間前に日焼けして、背中の皮が剥けていたところだったので、アカスリで「全部擦り落としてくれい!」みたいな感じだった。
全身をくまなくアカスリしてもらって、次はきゅうりパックとオイルマッサージ。
肩が凝っているのが分かったのか、担当のアジュンマがこれでもかと言うくらい丁寧に肩の部分をマッサージしてくれて気持ちよかった。
そのあと、シャンプーをしてもらって全コース終了した。
シャワーを浴びた後、丁寧にタオルで全身を拭いてくれ、湯上り用の服を渡してくれた。
小さい子供のころに戻ったみたい。
服を着てから「スゴハセヨー(お世話様)」と言うと、担当のアジュンマが再び私の凝った肩をモミモミしてニッコリ笑顔で見送ってくれた。
マッサージ自体はすごく気持ちよかったのだけれど、肩こりからくる頭痛はまだ改善していなかった。
1階に上がり、店員の言うとおりに3階に行ってドライヤーで髪を乾かして、2階の食堂でサービスの食事をすることに。
せっかくのサービスなのだけれど、そのときの私には食欲が無かった。
でも、一応言われたとおり食堂に入る。
食堂には店員と私の他には誰もいなかった。
板の間にテーブルが置いてあり、適当な場所に座った。
床暖房の適度な温かさが心地よい。
受付で渡された札を提示すると、すぐに食堂のアジュンマは私の食事の用意にとりかかった。
しばらくして、ワカメスープとニラとイカのチヂミとシッケが運ばれてきた。
普通の体調の時ならばすごく喜んで喰らいつくであろうスープとチヂミも、今の私にとっては目の前にあるだけでやっかいな存在だ。
とりあえず、スープを少しとチヂミを一切れいただく。
スープはワカメたっぷりだったし、チヂミはパリッとしていた。
これで体調が悪くなれば!!指圧マッサージを受けて体調を万全に回復させておけば良かったとすごく後悔した。
とりあえずシッケだけでも全部のんでおこうと本当にゆっくりなペースで飲んでいると、もう一人お客さんが入ってきた。
常連さんなのか、食堂のアジュンマと韓国語で話をしている。
私の皿に残っているチヂミやスープを見て、韓国語で話し掛けてきた。
たぶん「美味しくないの?」と聞かれているようだったので「マシイッソヨ。(おいしいです)」と言って「お腹がいっぱいだ」というジェスチャーをした。
すると、食堂のアジュンマを呼んでくれ、「お腹がいっぱいなんだって。持ち帰らせてあげたら?」」と説明してくれたらしい。
すぐにアルミホイルを持ってきて、チヂミを包んでくれた。
あと、ついでに汗蒸幕の中で加熱したゆで卵が欲しかったので看板のメニュー(漢字でかいてある)を指さして、「イゴ ジュセヨ。(これください)」と言った。
すると、受付のあるところまで案内してくれて、受付の店員さんに言ってくれた。
店員さんは卵を2つアルミホイルに包んで、塩も付けてくれた。
いくらか尋ねると、ニッコリ笑って「サービス」と言ってくれた。
食堂のアジュンマに「カンサハムニダ。」とお礼を言うと、「また来てね。」という感じで私を抱きしめてくれた。
人の温かさにほっこりした気分で、着替えを済ませ再び受付に行くと、「どこまで帰るんですか?」と聞かれたので「梨泰院のクラウンホテルです」と言うと、「じゃぁ、江南の駅まで送りますよ。」と言ってくれた。
お言葉に甘えて、ワゴンカーに乗り込む。
韓国人のきれいなお姉さんも一緒に乗ってきた。
最初気がつかなかったのだが、汗蒸幕に入るところでお世話してくれた店員さんだった。
車で行くと、駅までは3分もかからない距離だった。
地下鉄の入り口に車を横付けしてくれ、私達は車を降りた。
「どこまで行きますか?」と店員のお姉さんが聞いてきた。
「ノクサピョン。」と答えると、彼女は「途中まで送りますよ。」と言ってくれた。
おまけに、手に持っていた荷物も持ってくれた。
その親切心に全く嫌味が感じられない。
目的地のノクサピョンまでは地下鉄を2回乗り換える。
一人でも特に問題なく到着できると思うのだが、(実際汗蒸幕に行くときは一人いけたし。)やっぱり乗り換えの時はスムーズだった。
地下鉄の中でいろんな話をした。
彼女は、日本には行きたいけれどまだ行ったことがないということ。
大阪に友達がいるということ。
もうすぐ汗蒸幕をやめてしまうということ。
その他いろんなこと。
日本ではただの店員とお客の関係で、店の外に出てまで話をするなんてことは滅多にないだろう。
今考えるとメールアドレスくらい教えておけばよかったかもしれない。
2回目の乗り換え駅に着き、彼女と握手をして別れた。
ホテルの最寄り駅に到着した。
まだ、頭痛は治らない。
疲れた体を引きずり歩き、ようやくホテルに到着。
まだ夫は帰って来ていない。
ミネラルウォーターを飲み、楽な格好に着替えてベッドに入った。


ピンポーン。
部屋のベルが鳴らされた。夫が帰ってきた。
ドアを開け、時計を見ると10時を過ぎていた。
2時間ほど眠ったようだ。
頭痛はすっかり治ったが、少しだけボーっとしている。
しかし、さっきの頭痛の程度であれば、翌朝まで眠らないと治りそうもなかったのに、これは汗蒸幕とマッサージのおかげだろうか。
お腹が空いたので、テイクアウトしたチヂミを食べることにした。
そこで醤油がまだ残っているか夫に聞いたところ、「あ、醤油ねー、持っていくの忘れちゃったんだよ。」
しかも夫のみならず同行者全員が「しまった。ワサビと醤油忘れた!」状態だったらしい。
せっかくの新鮮な刺身だったのに。せっかく日本から持ってきたのに。
とりあえず、チヂミのたれは確保できた。
アルミホイルにくるまれたチヂミとゆで卵を取り出すと、両方ともまだ温かさが残っていた。
醤油をつけてチヂミを食べる。
さっき食べた時のパリッとした食感がないのが残念だ。
でも、ニラとイカの風味が美味しく感じられた。
またもや「さっき体調が良ければ・・・」と悔やまれた。
汗蒸幕卵も食べてみる。
普通のゆで卵よりもプリッとした食感で、燻製卵のようだ。
夫の分も食べてしまいたい衝動に駆られてしまったが、そこは我慢した。

夫が今日行った水産市場のことを話してくれた。
魚市場で適当な魚を買い、それを市場の店と提携している食堂に持っていくと、刺身と鍋に料理してくれるらしい。
刺身はコチュジャンと一緒にエゴマの葉っぱに包んで食べるそうだ。
韓国の人は生ものを食べるとき、毒消しの意味合いで香りの強い葉野菜と一緒に食べるのだそうだ。
エゴマがあまり好きではない夫は、「全員一致で『青ジソがあれば絶対ウケル』という意見だったよ。」と言っていた。
紫蘇はどこでも良く育つから、日本から紫蘇の実を持ち込んだらワサワサと生えてきそうな感じだけどな。

まだ少しボーっとした感じが抜けないので、翌日に備えて眠ることにした。

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