初日


ソウルへの出発日が近づくにつれ、心配なことがあった。
それは、現地での天候。
前日、台風9号が九州において大きな被害をもたらしている。
飛行機がちゃんと飛んでくれるかどうか。
そして現地では雨になったりしないだろうか。
ワールドウェザーニュースでは、出発前夜まで「帰国する29日以外は全部雨マーク」という悲惨な予報。
自分で言うのもなんだが、私は晴れ女、夫にいたっては月1回ペースで行くゴルフでは殆ど降られたことのないという晴れ男である。
「大丈夫、絶対晴れる。」と思いながらも、念のため、折りたたみ傘をトランクに詰め、いざ成田へ。

JAL951便は午前9時50分発。ツアーなので、2時間前が集合時間である。
東京駅から6時11分発の快速エアポートに乗り、7時35分に成田到着。
エアチケットを発行してもらい、出国手続きをする。
チケットカウンターで気が付いたのだが、釜山行きは欠航らしい。

成田の免税店を覗いて、現地で会うことになっている夫の後輩に渡すお土産を選ぶ。
酒税がかからないのでビールがべらぼうに安い。
韓国のビールはコクがないと聞いているので一番搾りを購入。
あと「韓国には無いんじゃない?」という夫の意見で水まんじゅうも買った。
搭乗開始まで、あと1時間。
待合いのシートに座って、これからの旅の計画(最終案)を練っていた。


JAL951便に乗り、仁川(インチョン)国際空港へ。
国際線フライトでは、いつも機内食のまずさワースト1にされてしまうユナイテッド航空にしか乗った事がないので、機内食は楽しみでもあったのだが、「海苔巻き弁当」的な機内食に少しガッカリ。
「なんだよー、韓国線なんだからビビンバくらいだしてよー」と思ったが、仕方がない。

機内食を食べ、うたた寝をしているうちに仁川国際空港に到着。
ソウルの上空は青空が広がっていた。
出国手続き、税関検査を済ませ、現地ガイドと合流。
「トイレに行きたい。あと携帯電話もレンタルしたい。」と、「すぐ出発したいのですが」というガイドを困らせる。
(結局ガイドさんは、携帯レンタルの手続きに付き合ってくれ、ハングルの通訳もしてくれた)

仁川国際空港からは現地ガイドのワゴンカーに乗り、ソウルまで約1時間。
現地ガイドの話を聞いていたが、ガイドブックを読み漁っていた私にとっては目新しい情報はあまり無かった。
途中、新羅免税店と梨泰院のアヤシイ土産物屋に立ち寄り、私たちが泊まるクラウン観光ホテルに到着。
築20年は経っているので、お世辞にも立派なホテルとは言えないが、ホテルの滞在時間は短いし、なんとここのホテルには汗蒸幕もあるのだ。
(部屋のシャワーを使わずにサウナに入り浸るつもり。)
チェックインを済ませ、部屋に荷物を置き、自分の足でソウルを堪能すべくホテルを出た。


今回の旅の目的の一つに皮ジャケットオーダーメイドがある。
ホテルのある梨泰院は皮革製品を扱う店が非常に多い。
真夏でも、見るだけで暑苦しくなるくらい皮のコートやジャケットが所狭しと並べられている店が何軒もある。
出国前にネットで調べた梨泰院の駅の近くの皮革専門店に足を運ぶ。

と、その前にホテルを出たすぐ近くに眼鏡店発見。
ここの店もネットで調べて、割引クーポンをプリントアウトしてきた。
「絶対メガネを作って来るぞ!」と強く思っていたわけではないのだが、韓国ではメガネが安く作れるし、時間もそれ程かからないと聞いていたので、店に入ってみた。

店内には私たちの他にはお客はいない。
平日昼間だし、駅前の繁華街から離れているせいだろうか。
店員さんは日本語が話せる。
まずフレームを探す。
あーでもない、こーでもないと店員さんの出してくれるフレームをかけては外し、結果、縁なしレンズのフレーム(50000W)に決定。
コンタクトレンズを外し、検眼へ。
その前に、「ハードコンタクトだと、目を15分ほど休ませないとちゃんと検眼できません。こちらでお話しましょう。」と椅子に案内され、冷たいオレンジジュースをごちそうしてもらいながら、店員さんと話をした。
この辺が日本のディスカウント眼鏡店とは大違いだと感じた。
その後、検眼。
検眼後、レンズの種類を選ぶように言われ、一番安い20000Wのレンズに決定。
普段はコンタクト愛用者で、裸眼でも生活には支障は来さないから、安いレンズでも困ることはあるまい。
私の目は乱視が入っているので、日本ではこんなに安いレンズではメガネが作れない。
結局20%オフクーポンを持っていたので、しめて56000W(日本円で約5600円)に。
オマケにメガネドライバーとFIFAワールドカップのマークの入ったTシャツ(見るからにライセンス商品じゃない)をプレゼントしてくれた。
(メガネドライバーは嬉しかったけど、Tシャツは正直もらっても困る。帰国後即座に実家へのお土産荷物の中に入れた。)
メガネは仕上がりまでに、30分程掛かるらしい。
「ホテルに届けますよ。」と店員さんが言うので、お願いした。
店員さんに見送られ、店の外に出ると、さっき検眼をしてくれた別の店員さんが車の中で待っていてくれた。
「お出掛けでしたら、梨泰院の駅まで送りますよ」とのこと。
これはラッキー。
ここから梨泰院の駅前までは徒歩10分以上かかるのだ。
やっぱり韓国でメガネ作って正解。
私たちを乗せた車は、梨泰院の駅に到着し、私たちはメガネ店の店員さんに「カンサハムニダ」と言って車を降りた。



お目当ての皮革専門店はハミルトンホテルの裏手にある。
割引クーポンに載っている地図を見ながら歩いていると、店の前で男性が2人喋っていた。
私たちが持っているクーポンに目敏く気付いた男性は、私たちが自分の店の客だということにすぐ気づき、店内に私達を案内するなり、「安いですよ。どんな物をお探しですか。」と日本語で話しかけてきた。
(その男性は店の社長だった。)

「皮のジャケットが欲しいんです。形はテーラードで。」と言うなり、ベージュのテーラードジャケットを私に着せてくれた。
ラムスキンだから軽い。
少し胸のあたりに余裕が無いような気がするが、デザインは気に入った。
「もう1サイズ大きいの無いですか?」と聞いたが同じ色形では無いとのこと。
次に別の形の黒のショートコートを見せてくれた。
皮のコートではベーシックな色、デザインのそれは私の体型にはピッタリだった。

デザイン的にはベージュのジャケットが「欲しいそのもの」という気がするが、黒のショートコートも悪くない。
オーダーメイドという言葉も出そうになったが、「既製品で十分ですよ。もっとダンナさんが稼いでくれるようなったら来て下さい。」という社長の薦めで既製品を買うことにする。
ちなみにそれぞれのジャケットの値段は1着190000Wだという。
当初はオーダーの予定だったから、予算は半額で済んでいる。
「2着買うから300000Wに負けて。」
ワザと思いっきり安く吹っ掛けて、交渉の末、2着で350000Wに決着。
うち1着は袖丈が長かったのでお直しに。
すぐできるらしいが「待っている間の時間がもったいないし、これからお出掛けだったら荷物になるからホテルに届けますよ。」という社長にお願いして、店を出た。

ベージュのジャケットが、きれいに着こなせるようにムダ肉を落とさねば。
皮革専門店を出て、仁寺洞に行くために地下鉄の入り口に向かおうとしたところ、ふとNIKEの看板が目に入った。
NIKEが好きな夫に多少は気を使ってやらないと悪いので、「入ってみる?」と声を掛けた。
「そうだね。」
通りを渡って、NIKEのショップに向かう途中、日本でもお馴染みTHE BODY SHOPがあった。
私はBODY SHOPのミントの香りの足専用スクラブがお気に入りで、日本でセールをしていた時も買おうかどうか迷っていたのだが、「たしかソウルにもBODY SHOPはあるはず。そして絶対にソウルの方が安いはず!」と思って買い控えをしていたのだ。
店の中に入り、スクラブが置いてある場所に行く。
ここの店の店員さんは日本語が判らないらしい。
「オルマエヨ?(いくらですか?)」と聞くと、「7500W」という答えが返ってきた。
おぉーやっぱり日本より安い。
「日本ではセール値で9800Wもするんですよ。」とつたない英語(梨泰院には米軍基地があるので英語はどの店でも通じる)で教えてあげた。
スクラブと足用スプレーを購入し、店を出た。

そしてNIKEに向かう。
30%オフセールをやっているらしい。
ゴルフ用にポロシャツや帽子を物色する夫。
ハンガーに掛かっているウェアを見ていると、夫に似合いそうな配色のウィンドブレーカーを発見した。
夫に見せると、夫も気に入ったようだ。
ソウルには明洞にもNIKEがあるので、とりあえず今日のところは買うのを保留しておいた。
(梨泰院の店には滞在中いつでも行けるから。)

NIKEを出て、地下鉄の駅に向かう。
途中、露店や店先に「何かちょっと違うヴィトン」とか「プラダに似ているオリジナルというタグのついたバッグ」、その他グッチだのエルメスだのコーチだのとにかくブランドというブランドに「似た商品」が並んでいた。
うーむ。あやしすぎる街、梨泰院。



そして地下鉄に乗り、仁寺洞を目指した。
ちなみに私たちが乗った地下鉄の電車はアン・ジョンファンがペイントされている車両だった。
写真を撮りたかったが、その時カメラを持っていなくて、すごく後悔。
その後何度も地下鉄に乗ったのに、アン・ジョンファン電車には巡り会えなかった。
悔しい。
薬水という駅で地下鉄6号線から3号線に乗り換え、安国という駅で下車。
目指す店は、仁寺洞のメインストリートから路地に入ったところにある。
店の名前がガイドブックに載っていたのとは違っていたので、見つけるのに苦労した。
ガイドブックに載っていたその「ありありらん」という店では、韓定食を食べながら、間近で伝統舞踊を見られるディナーショーレストランである。
念のため、ガイドブックのページを指さして「この店はここ?」のジェスチャー。
ニッコリとうなずいて、店員さんは私たちを店内に案内してくれた。

私たちが案内されたのは、舞台の真横のブロックの一番端。
舞台の真正面のブロックは全部予約で埋まっているらしい。
飛び込みで入れただけでも、ラッキーだったかも。

時刻は夕方6時過ぎ。
ショーの開始時間は午後8時である。
これが普通のレストランだったならば、ショー始まるずっと前に料理は食べ尽くし、ショー開始まで、貴重な旅の時間を「ぼやー」と過ごしてしまうということになりかねないのだが、ここは韓定食のレストランである。
ちなみに「韓定食」とは、品数が約20皿も出てくる韓国宮廷料理を庶民風にアレンジした料理。
庶民風にアレンジしたと言っても、品数豊富なのには変わりがなく(さすがに皿数は減りますが。)、食べるのに時間もかかるのだ。
私達は、37000Wのコースをオーダーした。

間もなくして、料理が運ばれて来たが、あれよあれよという間にテーブルの上はお皿でいっぱい。
ホバク(韓国のカボチャの一種でズッキーニに似た感じ)のチヂミとポッサムキムチがすごく美味しかった。
そして気が付くと、時刻は20時。
店内の照明が落とされ、韓国伝統舞踊が始まった。
「すばらしい」の一言では言い表せないくらいすばらしかった。
とにかく優雅で華麗。
でも、足元を見ると、すごい速さで細かい動きをしていたり、激しいステップを踏んだりしている。
ここでもカメラを忘れた事を後悔。
途中で、空いている前方の空いているテーブルに「移ってもいい?」と聞くと、OKが出たので、より間近で迫力のある踊りを見せてもらうことができた。
締めの五味子花茶(オミザファチャ:韓国伝統茶の一つ)とお菓子をいただいて、「ショーも終わったし。」とお会計を済ませ、店を出ようとすると、「お土産のカップです」と言って、袋に入った箱を1つずつくれた。
「もしや、これは私がすごく欲しがっていたアレでは無いだろうか?!」と、期待に胸膨らませながら、ホテルに戻った。
ホテルに着くと、買ったメガネがフロントに届いていた。
但し、フロントの係の人から「届いてますよ。」と言われたのではなく、「あれ、私あての荷物だと思うんだけど。」と指さしてようやく気が付いてもらえたというお粗末さ。
大事なメッセージとかちゃんと預かって、伝えてもらえるんだろうか・・・と少々不安に。
あれ?皮ジャケットらしき荷物が見あたらない。
げー、大丈夫か!?ぼったくられたってことはないだろうか?
フロントで聞こうとしたが、中国人観光客とおぼしき一行がフロントで揉めている。
後で落ち着いているときに聞こうと思い、まずは部屋に戻って荷物を置いた。

すぐに先程の「ありありらん」でもらったお土産の包みを開けた。
期待に抱いていたとおり、箱の中から「一人用茶こし付きカップ」が出てきた。
コレ、これを買うために韓国に来たと言っても過言じゃないのだ。
ありありらん、非常に太っ腹である。
あのショーと食事だけでも37000Wで十分満足なのに、このお土産とは。
しかも予約しないで飛び込みなんだけど、私ら。
嬉しいオマケに思わず頬がゆるむ。



10時を回ったので、ホテルのサウナに行くことにした。
いよいよ汗蒸幕初体験である。
ホテルの汗蒸幕は実は本命ではない。
本命の汗蒸幕には、ネットで予約をし、明日行くことになっているのだ。
今日のところは、入場料(10000W)のみで、汗蒸幕サウナとお風呂を楽しむつもり。
ホテルの階段を降り、女性用のサウナに到着。
素っ裸になった上にピンクの薄手のガウン(?)を羽織る。
浴場の入り口のところで、「ガウンも脱いで、入ってきなさい」と言われ、従う。
まず、汗蒸幕である。
麻の袋をかぶり、小さな入り口からかがんでドームの中に入る。
暑い。
でも私がサウナ慣れしているのか、ここの汗蒸幕の温度が大したことがないのか、結構長い時間入っていることが出来た。
外に出ると、「シャワーを浴びて、左から順にお風呂にはいって。」とアジュンマに言われる。
左から高麗人参風呂、ルイボス茶風呂、緑茶風呂の順にお風呂が並ぶ。
適当に時間をかけて全部のお風呂に入り終えると「今度はこっち」と黄土サウナ部屋に案内された。
黄土サウナに寝っ転がって、汗をかく。
外に出ると、アジュンマが「シャンプーして体を洗って。」と指示したが、「汗蒸幕にまた入りたい。」と言うと、ニッコリ笑って「水に濡れていると暑くなるから」と体に付いている水滴をタオルで拭き取ってくれた。
再び汗蒸幕にトライ。
サウナの入りすぎでのぼせたのか、最初よりも長く入っていることができなかった。
汗蒸幕から出て、「脱水症状」の気配を感じたので、アジュンマに「ムル、ジュセヨ〜。(水ちょ〜だい〜)」とヘロヘロなジェスチャーをかましながら言った。
「アッチ。」とアジュンマが指さす方にベンチと冷たい水の入ったポット、紙コップが置いてあった。
こっちから言わないと水をすすめてくれないのか。
もうちょっと、日本人の脱水に気を使ってもらわんと・・・。
もう一度黄土サウナに入り、髪と体を洗って終了。

部屋に戻る前に、フロントで皮ジャケットが届いていないか確認することにした。
フロントの係員は「私のところでは預かっていない。彼は知っているかも。」とエレベータのところにいる従業員を指して、ハングルでなにやら話しかけていた。(おそらく「皮ジャケット預かってない?」)
すると、エレベーターのところにいる従業員が、背後の鍵付きの部屋に入り、中から黒いビニール袋を出してきた。
部屋番号と名前を確認し、皮ジャケットは私の手元に。
一応、高級品の部類なのか厳重な保管をしてくれていたみたいである。
疑ってスマソ。

安心して部屋に戻り、就寝した。



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